ひとこめのーと

ひびのつみかさね

参議院議員定数の増加は稚拙

私は法学部という所属柄、ニュースを法的に見ることが多いので、「考えていることを書く」というのがコンセプトのこのブログも、政治系・法律系が多くなると思われます。あらかじめご承知おき。

 

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参院6増法案 与党18日成立の構え 野党は徹底抗戦

日経新聞電子版 平成30年7月17日)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33063520X10C18A7PP8000/

 

ここ数週間で突然提唱され、あっという間に成立しそうな参議院議員定数の増加案。

自民党の発案ですが、与党パートナーの公明党もびっくり、普段は与党寄りの日本維新の会も猛反発している法案です。

この法案は、埼玉選挙区の選出人数を2人増やすことと、「優先枠」を比例代表選出内に2つ設けるということの2本立てです。

前者は、いわゆる一票の格差の是正を目指すもので、これにより投票価値の最大格差は3倍未満になると試算されています。

前回の選挙から「鳥取・島根」と「高知・徳島」がそれぞれ「合区」となり、選挙区選出枠が4つ減りました。後者は、これを救済するため、比例代表選出の一部に拘束名簿式の特別枠を設けるものです。

 

この一連の流れについて、私の意見を簡潔に述べるならば、「やりすぎだ」となります。

 

安倍政権になってからの5年間、同政権はしばしば「強権的」「非立憲的」などと批判されてきました。その一部を列挙するならば、

・安保法制

特定秘密保護法

・組織犯罪処罰法改正(いわゆる共謀罪

などとなるでしょう。

これらについては、私は一定の支持をしています。

これらの法律は、緻密な論理に支えられており明らかに憲法違反とは言えません。与党の主張にも、野党の反論にも、一定の理があります。あとは両者で議論をし、最後は多数決で決めるのみです。

強行採決と批判されますが、強行採決とは、野党が納得していな状況で採決をすることであり、野党の主観により定義されるものです。与党は各法案について、それなりの時間を費やして審議しており、私はこれで十分と考えています。「強行採決」はただの野党の政治的演出に過ぎません。

 

しかし!

今回の参議院議員定数の増加は、(いままである程度自民党を支持してきた私から見ても)だめでしょう。理由はいくつかあってごちゃごちゃしていますが、頑張ってまとめてみます。

 

まず、この財政難の時代に、6人も議員を増やす正当性が不明です。

税金や保険料が上がり、国民の負担が増えている現在の日本では、衆議院議員の定数が徐々に削減されるなど、全体的に議員関連支出の減少に向かっています。この流れに逆行する6人増。議員定数増加が絶対悪なわけではありませんが、きちんとした理由付けが必要です。

しかし、私の考えた範囲では、理由が見当たりません。

一票の格差是正のための2増については、いまの時代の流れからは合区の推進などの議員定数削減を通して解決するべきでしょう。

比例代表内に拘束名簿の特別枠を設けることについては、これもよくわかりません。現行の参議院議員選挙比例代表は非拘束名簿式で、有権者の意見がより反映されやすくなっています。一方の衆議院議員選挙の比例代表は、政党の意向が強く反映される拘束名簿式です(ただし、重複立候補の制度により、有権者の意見もある程度は反映されます)。この制度の違いで多少の差別化を図っていますが、今回の改正は、有権者の意見を反映させる非拘束名簿式を弱め、政党の意向を優先する枠を設けるものです。わりと大きな方針転換なのですが、その理由は、鳥取・島根・高知・徳島から選出されていたが合区導入により居場所がなくなった候補者の救済という、完全に自民党の都合によるものしか見つかりません。

仮に、拘束名簿式の特別枠を設けることが必要だったとしても、従来の比例代表枠の数を維持したまま、そのうちの4つを特別枠にすればよいのであり、4つを追加する必要はありません。これも、従来の比例代表選出議員の既得権益を守るためなのでしょう。

とにかく、「身を切る改革」が求められる今の時代に逆行し、しかも逆行することを正当化する理由もないのです。

 

次に、野党との合意形成があまりにもないがしろにされているのも問題です。

民主主義というのは最後は多数決で決めるというのは原則なので、私はある程度の議論を経れば、「強行採決」も問題ないと考えています。

ただし、選挙制度については別です。

なぜある程度の「強行採決」が許容されるかといえば、多数派の議員は多数の国民の意見を正当に反映しているからです。議員は正当な選挙を通して国民から権力を委託されているのですから、背後にその多数の国民を背負って「強行採決」するのも仕方ありません。

ただ、その前提は、彼らが正当な選挙によって選ばれている、というところにあります。国会の審議を「多数決ゲーム」というゲームにたとえるのならば、選挙制度はその土台となるルールです。ここは、与野党の広い合意を通して変えなければ、多数派の議員の地位も揺るぎかねません。

だから、選挙制度の議論は丁寧にしなければならないのです。

 

 ・・・後半、少し自分の言いたかったこととずれているような気もしますが、とりあえず今回はこのへんで。